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●自由英作文塾・第6日目

 第5日目では,自由英作文の形式面に関して受験生が守るべき具体的な手順を述べました。

 今回は,いよいよ実際の受験生の答案を紹介しながら,自由英作文の内容面に関する指導の現状を報告することにします。


講義の教材

 自由英作文の一日目の講義では,まず以下のような教材を使って指導していきます。

 次の題で100語以内の英文を書きなさい。

 My Opinion about School Uniforms


【解 答】

 

 なお,講義時間は90分,今回のサンプルは国公立志望の平均偏差値60程度の母集団です。

 前回までで述べたことをまとめると,以下のような手順になります。

 1. テーマについて自分で意見を考える。

 2. その意見を日本語で下書きする。

 3. 下書きは演繹的な構成にする。

 4. その下書きに基づいて英文を書く。

 この手順を教える前に,まずは何も先入観のない状態でこの教材を使って問題を解かせます。この時点でクラスの約60%の生徒は,下書きなしでいきなり英文を書き始めました。さらに30%の生徒は,一応日本語の下書きを書くのですが,下書きと言っても演繹的な構成にはほど遠い,単なる日本語の文章かメモの羅列を全部書きなぐり,それを英作文していました。

 驚くべきことですが,あるべき自由英作文の手順を守って解答したものはクラスの10%に満たないのが現状です。

講義の運営

  約20分ほどで最初の問題演習を終えて,改めて先月号で紹介した自由英作文の定義や手順を詳しく教えてあげると,生徒の表情は一変するものです。初めて自由英作文の実態が明らかになり,その書き方が納得できて,今までの思いこみや過度の気負いが解消されるせいか,一種のカタルシスを感じてくれるようです。 その後以下のような教材を再度配布して,同じ問題をもう一度解かせて,その答案を回収して一日目は終了します。

 一日目の講義ではとにかく自由英作文の虚像をあばき,その解法のプロセスを納得させることが優先されるので,あまり欲張らずに説明も絞って展開することが大切です。

 次の題で100語以内の英文を書きなさい。

 My Opinion about School Uniforms


【日本語下書き】

 

 


【解 答】

 

 


【評価覧】

● 内容面

● 表現面

 

 今度の教材には「日本語の下書き」欄が明示してある点と,評価が内容面と表現面の両方ついている点が,最初の教材との大きな違いでありしかも大切なポイントです。 講師は回収した答案を添削して,その中で特に典型的な内容面の間違いをしている答案をいくつか(だいたい4〜8例くらい)選び出し,縮小コピー(B4 両面2枚以内)にまとめます。

 二日目の講義では,こうして準備した生徒の実際の答案を使いながら,内容面の検討をする事になります。この際,必ずコピーには日本語の下書きと英文の答案の両方とも入れることが大切です。もちろん生徒の名前を消して仮称(A 君・B さん)をつけます。

内容面の分析

  日本語の下書きがコピーに添付してあるので,二日目の講義ではその下書きを生徒と一緒に読みながら,「その下書きのどこが一体悪いのか?」を具体的に検証することが可能になります。以下に生徒の陥りやすい典型的な間違いのパターンとそれに対する指導コメントの具体例を挙げました。

 なお二日目の講義の目的は,日本語の下書きの精度を上げることなので,答案が英語としてどのような間違いをしているかという表現面に関しては,講義では一切コメントしません。もちろん添削する際に,純粋な文法・語法・構文・用語選択のミスは可能な限り詳しく赤入れ・訂正をしてあげるのことは言うまでもありません。

※ 以下にある囲み部分は英文を含め生徒の答案をそのまま収録しております。英語的な間違いもそのままになっているので,あらかじめご了解ください。

A 君の下書き(主観的なパターン)

 制服は嫌い。夏は洗濯できないから不潔で、冬は重ね着ができない。しかも制服は値段が高すぎる。

 I hate school inform. It is dirty because I cannot wash in summer and I cannot wear with other clothes in winter. And the price is too high.

  これは間違いのパターンとしては一番多く見られる,稚拙で主観的すぎる下書きです。「嫌い・不潔」というのはたしかに正直な感想かもしれませんが,非常に幼稚な個人的な好き嫌いを前面に出した内容で,大学入試における自由英作文の内容としてはあまりにもお粗末なものです。

 「無理してわざと嘘をつけ!」とまでは言いませんが,日々の生活体験をストレートに述べたに過ぎない感想文レベルを超えた,ある程度の知的な背伸びはやはり必要です。出題されたテーマに対する自分の意見を,社会的・普遍的な問題意識と呼べるレベルまで可能な限り高めることが大切です。

 さらに「値段が高すぎる」という内容は,経済的な金銭感覚が人によって大きな違いがある以上,他者を納得させるだけの「客観性」に乏しい,独断的・独善的なものになっています。特にこの場合の他者とは,採点者である大学の教官を指す訳ですから,「大学の講義を受けるだけの最小限度の教養を自分は備えているのだ!」という証拠を出すべきです。

 もちろん教養と言っても深すぎる専門的な知識までは要求しません。受験生にわかりやすい目標としては,新聞の見出しに出てくる用語レベルの内容くらいは最低限クリアーすべきです。

 入試の答案は第三者が評価する以上,他者とも共有可能な「一般的・客観的」な切り口で攻めるのが一番安全だと言えます。

B さんの下書き(知識羅列のパターン)

 制服は必要。昔から習慣になっているので、変える必要はない。制服があれば、いじめの問題も減るだろう。アメリカの一部も制服を採用したと聞く。

 I think we need school uniforms. Because it was a custom and we need not change it. If we have it, the problem of IJIME will decrease. I heard a school in America adapt it.

  これは割合成績の良い受験生に見られる「知識羅列タイプ」の下書きで,答案としてのまとまりに欠けています。それなりに高尚な内容に見えますが,とにかく字数制限を守ろうとするあまり,根拠としての具体例を沢山入れただけの答案に過ぎません。

 いくら具体的なデーターを箇条書きしても,それは自分の知識の多さを誇示しているだけで,論理的な構成の甘い漫然とした印象を与えます。

 このタイプの受験生は得意な分野が出題されなかったら,その時点で手も足も出ないという危険性もあります。意見と事実を混同してはいけません。

 自由英作文では平凡な意見でもかまわないから,それを論理的に述べることが第一目標であり,その目的の手段として根拠や具体例を効果的に使えれば十分なのに,知識量でごまかして結局自分の主体的な意見がぼやけてしまうことになります。

 さらに内容を詳しく検討してみると,かなり内容的にも怪しいものばかりです。「習慣を守る」という視点は下手すると,単純に歴史や伝統に安住しただけで,自分の意見表明を放棄した態度と取られかねません。

 また「制服といじめ」の関係も,特に因果関係があるとは言えない俗説で,意見の根拠としては説得力不足です。

 最後の「アメリカ」の伝聞も,一種の権威付けに過ぎず,論理展開に必要不可欠な情報というよりも,文章の飾り付け程度のものでしかありません。頭の回転の速さがかえって仇になり,自分のアイデアを垂れ流しただけで,論理的な構成にするのための,情報の綿密な整理・精選という取捨選択の行程を忘れてしまったのでしょう。

まとめ

  同じ講義で同じ問題を解いた,同じレベルの大学を志望する他の受験生のナマの答案を,このようにコピーという形で実際に見せることで,自分以外の受験生がどんな発想をして,どの程度の答案を仕上げてくるのかがわかり,色々な意味で受験生にとっては刺激や参考になるようです。

C君の下書き

 反対。社会ではTPOに応じて適切な服装を自分で判断する必要がある。制服の指定はその判断力を習得する経験を奪ってしまう。

 Students need not wear school uniforms. This is because it prevents them from being independent. After they graduate school, they should choose their own clothes, depending on the daily situations. So students should should experience what clothes are best by themselves.

 

 陥ってはならない間違いのパターンを飲み込んだあとに,もう一度三日目の講義で解答を書かせます。この段階では以下のような素晴らしい内容を書けるところまで成長を見せる受験生も大勢出てきます。若者の瞬発力はいつも大人の予測をはるかに超えるものです。

最後に

  今まで述べてきた自由英作文の指導方針は,予備校という非常に狭い世界でのささやかな試みに過ぎません。しかし自由英作文を解くことが,そのまま受験生の知識・教養・問題意識・論理的な思考の有無にまで直結しているということは彼らに確実に伝えられたはずです。

 たった3日間の講義でも,答案の完成度だけでなく受験生の顔つきまで明らかに変わります。予備校講師にとっては,そのような受験生の知的進歩を目の当たりにすることが何事にも勝る最上の喜びなのです。


 いかがだったでしょうか。ここまでの講義をしっかり読み込めた人は,自由英作文の概要がもう頭に入ったはず。あとは実践あるのみ!

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