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● 伊藤メソッドの学習法について●

○『英文法のナビゲーター』とは何なのか?

 『英文法教室』(研究社)という本があります。この本は、それまでの「文法は暗記するモノ」という概念を根本から覆し、その後の受験英語の在り方を革命的に変えた文法書でした。ただ、たいへん高度で、高校生レベルで読みこなすのは困難です。

 ところで、『英文法教室』のどこが「革命的」だったかというと、それまでは、文法がいわば「英文を説明するためのもの」だったのに対し、この本では「英語をアタマから読むための道具」として再編されたのです。

 『英文法のナビゲーター』は『英文法教室』をさらにわかりやすくした本です。もっと正確に言うと『英文法教室』を問題演習化したのが『新・英語頻出問題演習』、その『新・英頻』を講義化した本が、『英文法のナビゲーター』です。構文演習への橋渡しとしてはこれ以上の本はありません。

○『ビジュアル英文解釈』とは何なのか?

 名著『英文解釈教室』は英文中に現れるすべての構文を5文型の範囲内で説明しています。「構文事典」としても使用にも耐えうる網羅性にすぐれた参考書ですが、また同時に、その構成は「英語をアタマから読むための思考法」ということで一貫します。

 ただ、そういった「メソッドの一貫性の優先」の弊害で、頻度の高い構文も低い構文も同じような扱い方をされ、頻出の大切な構文なのに数がこなせないとか、それほど使われない構文なのに数例の例文が上げられるなどの現象が見られます。その欠点の克服を試みたのが『ビジュアル英文解釈』です。

 『ビジュアル』は、それほど無理のないやや量のある英文の演習を通して、基本的な構文を習得し、既習の構文を使い前よりやや難易度の高い英文で、次に大切な構文を学ぶという、段階式の演習を試みています。大切な構文は繰り返し現れ、そうでないものは英文の難易度が上がるにつれ現れるという、わかる人にはため息さえ出るほど、芸術的ともいえる英文の選択と並べ方をしています。そして、最後までいったとき、いつの間にか受験に必要な構文は、その重要度に応じて習熟している、というわけです。

 こんな本は他にはないし、たとえ伊藤先生に「もう1冊書いて欲しい」と言っても、できたかどうかさえ疑ってしまうほど、奇跡的なツクリだと思います。

○『ビジュアル』と『英文解釈教室』との違い

 『ビジュアル』は偏差値50以上くらいから問題なく使えますが、『解釈教室』は最初から60以上を要求します。また、『解釈教室』はほとんどの構文を網羅した構文博覧会的な本なので、どこをやっても、あるいは どこで挫折しても、やったぶんだけの力がつきますが、『ビジュアル』は繊細に作り上げられた積み重ね式の本なので、途中で止めると効果が半減以下になってしまいます。最後まできちんと積み重ねないと意味がありません。

 僕たちは英語を読む上で、英語の「形」を気にする必要がありますが、ネイティブはそんなものを意識しません。 単に意味だけに集中します。それが理想的な読み方です。でも、最初からそれをやるのは不可能です。その不可能にできるだけ近づこうと試みたのが『ビジュアル英文解釈』の挑戦と言っていいでしょう。

 『英文解釈教室』であらゆる構文の知識が得られますが、そのあとに英文を読むときはその知識を私たちは「知識」と知っているわけで、実際に英語を読むときに、私たちはその知識を使いながら意味をとらないといけません。つまり、『ビジュアル英文解釈』をやったあとより意味をとることに集中できる部分が減り、構文の意識のほうが勝ってしまうわけです。『ビジュアル英文解釈』がナチュラルであるというのはそういうことです。意識的に身につけた方法を無意識に使えるようになる無意識化のプロセスが、『ビジュアル英文解釈』では『英文解釈教室』より一段階少ないと言ってもよいでしょう。

 また、『ビジュアル英文解釈』を薦め、『英文解釈教室』を薦めない同じ理由でボクは「返り読み系」の参考書を薦めません。返り読み系のメリットはその場でわかりやすいことです。伊藤先生の本がそこにこだわって回りくどいのに対して、返り読み系は解説段階ですんなり理解できます。

 ただ、実際に読む段階で、意味に集中する部分がさらに減り形の意識というものがさらに高まります。英語を英語の順番で読むことを考えている『英文解釈教室』より、無意識化にかかる段階がさらに増えてしまいます(つまり、読めるようになるのに時間がかかってしまうわけです)。もし、目標がたとえば偏差値65くらいで、当面はそれ以上は望まないということであればこういった方法で習得する理由にはなると思います(65もあれば、おそらくたいていの大学に通るでしょうし)。

 もちろん、どちらも受験生のトップをねらえる本です。理屈が好きで語彙力も自信があるまどろっこしいのは嫌いというなら、もちろん『解釈教室』でもいいのですが『ビジュアル』のほうが万人向けなので、ここでは『ビジュアル』を中心にお勧めしています。

○『ビジュアル』の勉強の仕方○

 全訳できれば、全訳したほうが効果があるのは間違いありません。 しかし、時間がかかりますし、挫折しやすいかもしれません。その際は次のやり方をとってください。

1. 最初に辞書なしでひととおり読む。

2. 次に辞書を使って読む

 2も、キーワードのみ引くのと全部引くの2回をやる効果的ですが、しんどかったら1回でかまいません。

3. 辞書を引いてもわからない部分に下線を引いて紙に訳す。

4. 3を解説の全訳と比べる。

 ここまでやれば、全訳するのにも効果はひけをとらないはずです。なお、このやり方は一般的に、英文読解基本書をやる際におすすめします。

○伊藤メソッドにおける「文型」の考え方○

 まずは文型をきちんと覚えることです。まずは解説を追いながら例文を確認し、その例文のなかだけで、「文型という現象」を確かめることから始めてください。

 「現象」というのは、伊藤メソッドだとSVXでSとXの関係がどうなるとき、XがO(あるいはC)になるのか、SVXXで2つのXXのあいだにどんな関係があれば、OO(あるいはOC)になるのか、そこに尽きてくるはずです。

 なぜO=C(「主語+述語」の関係)であること知っておいたほうがいいのでしょうか。1つは、それが核の意味となってニュアンスがとりやすいから、もう1つは、長い文章の時に対処できる、の2点の長所があるからです。

 たとえば使役動詞だと、

have O C「OがCである状態を持つ」→強制の度合いが低い

make O C「OがCである状態を作る」→強制の度合いが高い

let O C「OがCである状態を許可する」→相手の意志を許すニュアンス

というように、核になる意味から把握できます。

 また、get O to Vだと「OがVすることを得る」で、またtoはもともと前置詞toが元になっていますから、「そういう方向性に進むことを得る」という核となる意味がつかめます。makeを「作る」「〜に…を作ってあげる」「〜を…にする」と、文型によって意味分けするのは最初はいいですのが、実際に骨のある英文を読むのには妨げになります。

 たとえば英文中でmadeを見て「作った」と考え、次にある

made me…

という部分でSVOCを想定したとします。

 すると次に「ワタシを…にした」と考えを変えなければなりません。で、次を見ると、

made me a pretty doll

となっていたとします。

 すると、前の考えを捨て「ワタシに美しい人形を作ってくれた」とまたまた動詞の訳語を修正することになります。

 短い文章ならこの程度で問題ありませんが、長い文章だとこんな感じで修正していくとかなり時間を食ってしまいます。いちいちmadeの訳語を変えるところから出発しなければならないからです。

 むしろ、madeを見た時点で「何か作ったんだな。何を作ったのだろう」と考え、me a pretty dollを見て「<me がa pretty dollを持つ状態>を作ったのか」 とすぐに意味がとらえられます(SVOOの2つのOにはhaveの関係があります)。

 SVOC、たとえば、

made me sick

なら「<meがsickの状態>を作ったのか」となります。

 このように考えれば、makeの訳語は「作る」だけでOKで、どんな文型であっても、SVOの英語を読むように理解でき、アタマから1回で読み進められるようになれるというわけです。